Q 人身傷害保険と過失相殺の関係

この記事は約3分で読めます。

過去10年以上の裁判例の分析を基に、最適な賠償額の見積もりをいたします。個人情報の入力は不要です。

>>無料査定サービスはこちらから

回答

交通事故で受傷した方が、人身傷害保険に加入している場合ですが、過失がある場合には有効に利用することができます。

最高裁判決(最判平24.2.20,最判平24.5.29)では、訴訟基準差額説という考え方を採用しています。どういうものかというと、人身傷害保険で支払われた保険金は先に過失部分に充当し、残額を賠償額の控除対象とするという考え方です。

例えば、治療費30万円、慰謝料89万円、過失割合20%というわかりやすいケースで説明します。この場合、相手方保険会社から回収できる金額は、下記のように計算します。

1 総損害額の確定

30万円+89万円=119万円

過失率20%の減額

119万円×20%=23万8000円

119万円-23万8000円=95万2000円

損益相殺

95万2000円-30万円=65万2000円

このように、相手方から回収できる賠償金は65万2000円となります。過失部分である23万8000円がもらえていないということになります。

人身傷害保険から30万円が支払われた場合

この場合、人身傷害保険金30万円を先に過失部分に充当されます。そのため、23万8000円を人身傷害保険で受け取り、30万円-23万8000円=6万2000円を損益相殺として控除します。

相手方から回収できる金額は、95万2000円-30万円-6万2000円=59万円となります。

回収した金額を合計すると、59万円+23万8000円=82万8000円となります。

このように、人身傷害保険で支払いを受けるともらえる総損害額が上昇することになります。過失部分が補填されるということですね。

そう考えると、絶対に人身傷害保険を利用した方が良いですよね。しかし、保険会社の運用の問題があります。

保険会社の運用

保険会社は、相手方に対する賠償が訴訟(判決や訴訟上の和解)で解決されない場合は、支払いはできないという回答をすることが多いという実情です。つまり、訴訟外で示談した場合には、人身傷害保険は使えません、ということです。

そのため、たいした争いもないのに、訴訟を提起するということがまああります。人身傷害保険の支払を受けるために訴訟をするということです。

ただ、過失が大きい場合は、人身傷害保険を先に利用して治療を受けているため、当然、控除したうえで示談しますが、先に相手方保険会社から一括対応を受けている場合に問題になります。

このように、人身傷害保険に加入している場合には、もらえる賠償額に差がでるため、注意しましょう。